【レビュー】嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え  岸見 一郎 (著), 古賀 史健 (著)

出版社: ダイヤモンド社 (2013/12/13)

ボクが、アドラー心理学にふれたのは、本書が初めてです。

アドラー心理学は、自分が変わるための心理学です。

本のタイトルにある「勇気」は、自分を変えるための勇気です。

本書を一通り読み終えた後、どうも、腑に落ちない点が3つありました。

一つ目は、アドラー心理学では他者から承認を求めることを否定しています。
さらに、誰かの役に立っているという主観的な貢献感があればいいと書かれていた点。

二つ目は、はたして、アドラー心理学とは真逆の考え方を持った集団の中で、自分だけこのようなあり方でいれるかどうか、という点。

そして、三つ目は、すべての悩みは対人関係の悩みであると考える点です。

まず、一つ目の、アドラー心理学では他者から承認を求めることを否定している点についてですが、結論から言いますと、これについては、少し考えてすぐに合点(がてん)がいきました。

ボクは、これを真っ先に仕事に結びつけて考えました。
ボクの仕事感は、他人の問題を解決してあげて、それに対する対価としてお金をもらうというものです。
問題を解決して、他人から認めてもらわなければお金をもらうことが出来ないのではないだろうか。まして、主観的な貢献感があればいいということは、ひとりよがりの押しつけになるのではないだろうかと考えたのです。

しかし、すぐに気が付きました。

「承認」を「感謝」に置き換えればよかったのです。

問題を解決してあげて、「ありがとう」と言ってもらう。さらに、自発的にそうできるように自分をとりまく他者との関係のあり方をととのえる。
なるほど、これだと自分と相手は対等で、理想的な関係がたもてるなと考え直しました。

これが、承認となると、主人と奴隷の関係です。

普段のボクは、無意識にそうした行動をとっていたのかもしれません。

次に、二つ目の、はたしてアドラー心理学とは真逆の考え方を持った集団の中で、自分だけこのようなあり方でいれるかどうか、についてです。

これについては、ある程度可能だが、完全にこの通りでいるのは難しいかもしれない、というのが今のボクの結論です。

ある程度可能としたのは、それこそ、本のタイトルにあるように嫌われる勇気を持てれば問題無いからです。

本書には、こうも書かれています。
もしも、あなたが異を唱えることによってくずれてしまう程度の関係なら、そんな関係など最初から結ぶ必要などない。こちらから、捨ててしまってかまわないと。

確かに、これは理想です。
ただ、すべての人がそれを実践できるかどうかをを考えると、どうなんでしょうか。

たとえば、学生で、体育会に所属している人の場合です。
先輩に対して、本書に書かれているような態度がとれるでしょうか。
異を唱えて、関係がくずれたら辞めてしまえばよいのでしょうか。
また、官僚制組織に所属している社会人はどうでしょう。
上司に対して、異を唱えることができますか。
生意気なやつとレッテルを貼られてしまうのが落ちです。
まして、新人であったらなおさらです。
まず、無理でしょう。

もちろん、そうした集団との関係を断ち切ってもかまわないというのであれば別ですが、いろんなしがらみを考えると、簡単なことではありません。

このように、上下関係が崩せない集団に属している場合は、難しいと感じます。
最悪、集団と決別する覚悟が必要になりそうです。
それが、本書の言う「勇気」なのでしょう。
そもそも、決別しろと言っているので、そうした集団の中にとどまろうとすること、また、こうしたことを考えること自体ナンセンスなのかもしれません。

最後に、三つ目の、すべての悩みは対人関係の悩みであると考える点についてです。

すべての悩みと言い切っていますが、はたしてそうでしょうか。

悩みをどう定義するのかにもよりますが、次のようなケースはどうなんでしょうか。

無人島で一人でくらしているとします。
自分が住んでいる小屋が、雨漏りし始めました。
修理をしても止まりません。
悩むと思います。

がけ崩れがおきて身動きがとれなくなった、食料の魚が穫れなくなった。
こうした場合も、悩むと思います。

いずれも、対人関係ではなさそうです。

ただ、無人島で暮らすことを現実的ではないと考えると、すべてとはいかないまでも、悩みの大半はやはり人間関係になるのでしょうか。

この三つ目の点については、今だに悶々としています。

これまで、ボクが腑に落ちなかった点について、三つあげつらえてきましたが、これは、それぞれ個別のことに対して感じたことで、本書に書かれている全体としての考え方は肯定します。

ところで、本書は、幸せになることについて書かれています。

あなたは、幸せと聞いてどのようなイメージを思い浮かべますか。

この、幸せについて面白い事例をご紹介しましょう。
2014年に発行された「データの見えざる手」という本があります。
株式会社日立製作所中央研究所主幹研究長である、矢野和男さんによって書かれたものです。
この中には、幸せについて次のような一文が書かれています。

自分から積極的に行動をおこしたかどうかがどうかが重要なのだ。
自ら意図をもって何かを行うことで、人は幸福感を得る。
行動の結果が成功したかではなく、行動を積極的に起こしたかがハピネスを決める。

これは、大量のデータを解析した結果の科学的な見解です。

アドラー心理学が唱えることを実践すれば、おのずとこれと同じような行動を起こすことになるでしょう。
本書は、そういう行動を起こすように、自分を変え、自分を取り巻く人との接し方を変えるという考え方が書かれたものです。


読後の本のゆくえ

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