【レビュー】やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける アンジェラ・ダックワース (著), 神崎 朗子 (翻訳)

出版社: ダイヤモンド社 (2016/9/9)

こうしたタイトルの本に興味をもつのは、向上心が旺盛な人だと思います。
今まで、何冊もビジネス書を読んでいて、頭のなかに、独自の考え方の骨子ができている人も多いでしょう。
そういった人は、この本に書かれている核心的な部分について表現の違いはあれど、「他の本にも書いてあったな」とか、「自分の考えていることと似ているな」などと感じるかもしれません。
それでも、研究者がその成果に基づいて書いた本であり、そうした人が読んでももともと頭のなかに組んである骨子をより太く強固にしてくれるものになりうると思います。

この本は、モラトリアムを謳歌している若者や、今、まさに壁にぶちあたりもがいている人はもちろんですが、子育て中の親や、何らかの団体・組織のリーダーをまかされている人、または、これからまかされようとしている人にも役立つ内容となっています。
さらに、もしあなたが、うまくいかない日常に悩んでいたり、人としてのあり方や生きる意味について考え、悶々とした日々を送っているなら、有益なヒントが得られるかもしれません。

ただ、この本を読むだけで書かれている内容のすべてを理解することは難しいでしょう。
人生経験が浅い若い世代の人はなおさらだと思います。
そこで、この本の内容を補完する意味でも、他のビジネス書、特にリーダーシップについて書かれた本を読みあさることも同時におすすめします。
この本のテーマは、リーダーシップについて考える場合と重なる部分が多いのです。
さまざまな切り口から、似たようなことについて考えることで、より、立体的にものごとを捉えることができるのではないかと思います。

著者であるダックワース教授は、父親から「お前は天才じゃない」、そう言われて育ちました。
しかし、2013年にマッカーサー賞を受賞します。
マッカーサー賞というのは、皮肉にも別名「天才賞」と言われているものです。
その、マッカーサー賞を受賞したのは、人々がそれぞれの分野で成功し、偉業を達成するには「才能」よりも「やり抜く力」が重要であるということを、科学的につきとめた功績によるものでした。

本の前半三分の一は、人生で何を成しとげられるかは、生まれ持った才能よりも情熱と粘り強さによって決まる可能性が高いと突き止めた著者が、その主張のより所を展開しています。

そして、残りの三分の二で、あるていど具体的な方法について述べています。

著者の研究のはじまりは、2004年、ペンシルベニア大学の大学院博士課程(心理学2年目)のことでした。
米国陸軍士官学校では、5人に一人が中退、しかも、大半は夏の入学直後に行われる「ビースト」と呼ばれる基礎訓練に耐えきれずに辞めてしまうという事実を知り、「最後まで耐え抜くのはどんな人か」という問がテーマでした。

最初は、その人が持っている才能への注目から始まりました。
やがて、才能以外の要素である努力の重要性を感じ始めます。
しかし、それはまだ、確たるものではありませんでした。
社会学者チャンブリスが著者との会話の中で発した、「偉業というのは、小さなことを一つづつ達成してそれを無数に積み重ねた成果だから、一つ一つの事はやれば出来ることなんです」という言葉にも疑問をいだいたままでした。
「やはり驚異的なパフォーマンスというのは天性のものではないだろうか」という考えを拭いきれないでいたところ、そのチャンブレスに、「ニーチェを読むといいですよ」と言われました。
この後、実際ニーチェに触れるのですが、そこで、天賦の才能をもつ人を神格化してしまったほうが楽なのだという、人間の性(さが)に気づきます。

そうこうする中で、ある日著者は、大学院の指導教員マーティン・セリグマン教授とのミーティングの中で、「アイディア一つ出していない」と言われます。

アイディアとは、「理論」です。

著者がそれまでしてきたのは、基礎観察だけでした。
その域を出て、「才能」「努力」「スキル」「達成」がどのように結びつけば成功できるのか、それを解明していなかったのです。

そう指摘された著者は、やがて、才能から達成に至る過程を論文にします。
その論文の中には、「才能」と「達成」の関係を表した2つの公式がでてきます。
そして、その公式にそった行動を持続させる要因として、「哲学」が重要だと述べています。
さらに、それらと関連付けられた「やり抜く人」に共通の4つの特徴を見いだし、これらはすべて伸ばすことができると主張しています。
ここから後の章では、自分自身である「内側」と、親やメンターといった「外側」のそれぞれの立場から4つの特徴を伸ばすにはどうすべきかということが述べられています。

この本に書かれている考え方は、試行錯誤しながら真剣に生きていれば、多くの人が自然にたどり着けるものかもしれません。
でも、ここにたどり着いた人が、あとに続く人を導いてあげることができれば、余計な時間と苦労を取り除いてあげることができると思います。

この本を読み終えたボクは、小学生の子育ての真っ只中にいて、いつも、親として自分はどうあるべきかと自問自答していました。
自分の生き方の部分で、現状に対して、妥協するか自分をつらぬくか、迷っていたためです。

でも、本の後半に書かれていた「子供は親を真似る」の部分に、その答えを見出すことができました。


読後の本のゆくえ

売りました。

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