【レビュー】新シニア市場攻略のカギはモラトリアムおじさんだ!  株式会社ビデオリサーチひと研究所 (著)

出版社: ダイヤモンド社 (2017/2/10)

総務省の統計によると、平成28年9月15日現在で、65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は27.3%だそうです。
男女別では、男性が男性人口の24.3%、女性は女性人口の30.1%で女性の比率のほうが大きくなっています。

日本の高齢者の割合は、主要国の中では最高で、こうした高齢者に向けたマーケティングは、一般に高齢者マーケティング、または、シニアマーケティングと呼ばれています。
新たな金脈を掘り起こそうと様々な企業が参戦しているようですが、どこも苦戦している様子が伺えます。

この本は、シニアマーケティングを展開する会社が、シニアマーケットを分析した結果発見した、あるひとつのセグメントに対してのアプローチ方法を提案するものです。

同社の研究所では、55歳から74歳までを対象に、そのシニアマーケットを多種多様な価値観から6つのグループに分類しています。そして、「セカンドライフモラトリアム」と名づけたグループをもっとも有望として、このグループ、特に男性について深く掘り下げています。

モラトリアムと聞くとまっさきに思い浮かべるのは青年期のそれでしょう。
若者が、それまでの自分を見つめ直して「自分とは何か」「自分らしさとは」などと考える不安定な時期です。

この時期をのりこえると、アイデンティティが確立されて自立していくのですが、心理学では、同じような時期が40歳くらいの中年期にもやってくるといわれています。
人生の中間地点を迎え、肉体的な衰えや自信のゆらぎなど、心理的に大きな危機に直面するのがその理由で、とくに、青年期にアイデンティティを十分に確立していなかった場合はふたたび「自分はどう生きるか」に直面せざるをえないようです。
ボクも、30歳代後半にこれを経験しました。

そして、最後にむかえる老年期。

この時期を男女別で考えると、女性の場合、結婚や育児などで生活環境が大きく変わる機会が多く、アイデンティティの組み直しを何度も経験しているため、老年期も比較的乗り切りやすいでしょう。

そうしたことを経験する機会が少ない、あるいは、まったくなかった男性の場合は、この老年期で大きくつまずくようです。
唯一のコミュニティだった会社を失い、何かをしたいとは思っているが、何もできずに悶々としている状態に陥ります。
この状態の人を、この本では「モラトリアムおじさん」と呼び、このグループに属する人へのアプローチに商機を見出そうとしています。
(※本では、こうした新型シニアは、少なくとも10年以上は増え続けていくと踏んでいるが、同時に、終身雇用の崩壊、会社人間の減少などにより、いずれ減っていくとも予想している)

ケーススタディで紹介されている社会福祉法人の事例では、そうした人達をボランティアに向けようとしていました。
そのために、70歳以下の人達が興味を持ちそうなプログラムを3ヶ月行っていて、一定の成果をあげているようです。

こうしてみると、たしかに「モラトリアムおじさん」へのアプローチは、新しくて面白いものかもしれません。

ただ、ここであえて「モラトリアムおじさん」側である方々に個人的な意見を言わせていただくならば、やはり、自分がどう生きるかについては自分の過去の経験から自分で答えを導きだしてほしいものです。

「それができないからモラトリアムなんだよ」と言われそうですが、なんだか全部他人まかせでは良いように使われて人生が終わってしまいそうな気がします。

なにより、「モラトリアムおじさん」になる前の段階、「青年期」や「中年期」でしっかり考える作業をしておくことが一番大切ではないでしょうか。
お金を使うにしても、そういった事を考える助けになるようなことに使うのが賢明かと思います。

ところで、「モラトリアムおじさん」にアプローチしようとしているマーケッター側の人が、実は「モラトリアムおじさん」予備軍だった、なんてことはないですよね。


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売りました。

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